
鎮守庸代
現在、ロンドンにて生活。 遠く離れても、心は故郷・鹿児島に。
ふたつの国の、11月11日。
2011/11/12

この時期になると、イギリスでは赤いポピーの花飾りをよく目にします。
街行く人の胸に、
街行く車のバンパーに、
教会の軒先に。
これは今日のためのものです。
『Remembrance day(リメンバランス・デー)』と呼ばれるこの日、
イギリスでは戦没者を追悼します。
ポピーが戦没者の象徴になったのは、
かつて戦闘が終わると
荒れた戦場を埋めるように育ってきたのがポピーだった、
と言われているからだそうです。
(花飾りは「英国在郷軍人会」という団体が募金活動として売っていて
収益金は英国軍関係者への支援に使われる。)
先日、私はある男性に出会いました。
彼は退役軍人で、街角で募金活動をしていました。

男性:こんにちは。君はどこ出身?
私:日本です。
男性:コリアじゃないんだね。
私は日本は大好きでね、銀座にも行ったことがあるんだよ。
後で気づいたのですが、
彼の胸には朝鮮の国旗を模したピンがついていました。
朝鮮戦争を経験したのかもしれません。
男性は私のつたない英語にも
終始微笑んで会話してくれていたのですが、
あるとき言葉を強くして、こう言いました。
「この募金は過去のためだけじゃないんだよ、
現在のためにもやっているんだ。」
言葉を失ってしまいました。
常日頃、私はこの国の戦没者追悼の
特に無名戦没者追悼の手厚さに、ある種の感銘を受けていました。
だから募金もしたし、彼と話してみたいと思いました。
でも彼のこの言葉で、ここは戦争の「現役」国だということを
改めて痛感させられたのです。

男性:日本の言葉をひとつだけ、知ってるんだ。
私:おお、何ですか?
男性:サヨナラ。
私:…。
いろんな意味で、切なくなりました。
一方。
日本の11月11日は、震災からちょうど8ヶ月という日でした。
正直なところ、私には今の日本の空気がわかりません。
「震災後」というものに対して
限られた伝聞でしか触れていないことに
最近、焦りというか、このままでいいんだろうかという気持ちが
大きくなりつつあります。
この時差をどう埋めていくのかがこれからの自分の課題だ、
と実感した11月11日でもありました。