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[1549] マスコミが変われば政治も変わる?

投稿者
島田陽一(仮名)
投稿日
02/12 22:05

 石原慎太郎さんという政治家は、少しばかり自己矛盾をはらんだ政治家であります。
 と言いますのも、彼は保守的、ややもすると右翼的な立場で発言をしておりまして、いわゆる「ポピュリズム政治家」に対しても相当厳しい批判をしております。一方で実は彼自身が「ポピュリズム政治家」というカテゴライズをされることもあります。
 既成の権力に対する「鋭い舌鋒」「明快な発言」はひょっとすると相当数の日本人の潜在意識を代弁し溜飲を下げているのかも知れません。これは橋下徹さんにも共通している特徴でありますし、小泉さんも理念や動機はともかく、手法としては同じであります。

 モノゴトを革新的に動かそうとするときに、官僚的な玉虫色発言はあまり役に立ちませんから、「ワンフレーズ」も仕方のない面があろうかと思います。リーダーに求められるものの一つは「クリアなビジョン」と言われます。
 かと言って「ドイツ人のアーリア化」という大変クリアなビジョンで人類史上最悪とも言える虐殺をした人もいるわけですから、問題は中味であるということは言うまでもありません。

 ドラッカー氏は著書の中で「誠実さ」の重要性を繰り返し述べております。この「誠実さ」は原著ではIntegrityと記されています。
 Integrityという言葉はITの世界、特にデータベースに求められる性質という用途でも用いられていて、「データ間で整合性が取れていること。首尾一貫していること」という意味合いで使われています。時と場合によって発言をころころ変えるような人は「一貫性がない。すなわち誠実でない」ということになりそうであります。この一貫性を支えるものは何かというと、私は「その人がどれだけ現実に対する深い理解があるか」であると考えています。

 テレビなどで流される彼らの発言を見ていると、とても「現実に対する深い理解」があるようには思えない。それは、本当にそういった発言をしていないのか、発言はしているのに「難しい話」は編集で全部カットされているのか。そうだとしても「ワンフレーズ」には反映されていない。
 養老孟司さんは以前、福島原発の事故が起きたときに
 「今ある原発を今後どうするかという話に関して言えば、政治の問題ではなく『技術』の問題である。日本では本来技術の問題に政治が入り込んできておかしくしてしまう」
 という話をしていました。それは例えば「教育」についても同じような話が言えて、教育現場においては「教育技術」というものが歴としてある。学力低下の話と日教組や戦後民主主義の話を絡めて政治的なものにしてしまった途端、現場が置き去りになる。

 そう考えていきますと、「現実に対する深い理解」というものが土台にないまま、痛快で胸のすくような発言を繰り返す人がそれなりの地位と権力を握っている現状は決して良い状態とは言えないと思います。

 筑紫さんはNEWS23のキャスター時代、番組の無い週末は東京を離れ、地方に赴いていたそうです。彼ほどの立場であっても、東京に身をおいたままでは見落としてしまう現実があったのでしょう。ジャーナリストとは何かと聞かれた筑紫さんは「永遠の大学院生」と答えたそうですが、筑紫さん個人に限って言えば「永遠のフィールドワーカー」という印象を持ちます。

 個人的にはマスコミが変われば政治も変わるのではないかと思っています。
 その変化の「方向性」として筑紫さんのジャーナリストとしての姿勢は目標になるのではないでしょうか?

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