編集委員の声

[10] 久しぶりの『ニュース23』編集長~長い1日

投稿者
WEB多事争論編集委員 吉岡弘行
投稿日
03/14 17:58

 3月13日の金曜日、故あって『ニュース23』の編集長を務めることになった。去年7月に番組から編集部という部署に異動したのだが、『23』にいたときも編集長業務は後輩が輪番でやっていたので、本当に久しぶりの「登板」である。
 『23』の編集長がどんな一日を送るのか?
このサイトのコーナー『23時の記憶』の1回目で、2003年1月31日のRolling Stonesをフューチャーしたときのことを書いたが、あれはかなり極端な例だった。今回、番組の編集長がどんな働きをするのかご紹介したい。
 
【11:00に出社】。
 新聞各紙に目を通し、TBSの昼ニュースのメニュー(進行表)をチェック。
 メールをチェック。NY支局の大友支局長(88年入社の同期)から「オバマ就任から間もなく1か月で、ニュージャージー州の閉鎖され病院を支局の松田記者が取材。セントラルパークには連日、医療関係者や病院を追い出された患者たちがデモ集会に詰めかけているので、今日の23で放送できないか」と打診あり。
 大友に電話し、「ぜひ放送したい。23のスタッフでVTRの『受け』担当者を決め、松田と直接、やりとりさせる」と返事。   
 
【11:30】
 民放各社のニュース・NHKのお昼のニュースをモニターで見ながら、『ニュース23』の「0版」の進行表を作成する。
 福岡で早くも桜が開花したものの、夕方から夜にかけて低気圧が発達し、夜は大荒れの天気になることを念頭に、トップ項目は「桜と天気」でいくことを決定。
 
【12:20】
 報道局のセンターテーブルで午後ニュースに向けた打ち合わせ。
①矢部センター長から注意事項。
②外信・政治・経済・社会の各部デスクから昼ニュースの項目のフォローアップの説明と午後に発生するニュースの取材態勢などの報告。特に社会部デスクから「カルデロン一家の問題が今日午後、節目を迎えそう」と詳しく説明あり。
③『イブニング5』『イブニング・ニュース』『ニュース23』の編集長が、それぞれ「0版」をもとに各部にメニューを説明。
 私は、「トップ項目に『桜と大荒れの天気』を据え、2項目目でソマリア海賊対策で海上自衛隊に派遣命令と関連企画。NY支局の病院崩壊の企画も入れることなどを報告。   

【13:00前後】
 デスク席で昼食。後藤キャスター・膳場キャスターに、上記会議を経て修正した「0版」の進行表をFAXで送信。
 出社してきた本日担当のスタッフと「0版」をたたき台に打ち合わせ。
①今日の目玉企画『ソマリアの実情を初めてカメラが取材!』の担当の金氏ディレクターと構成を確認。
②長谷川ディレクターをメイクアップ・デスクに指名し、1項目目の入り方、全体の演出を考えるよう指示。
(因みにメイクアップ・デスクは、実際の放送の時に「サブ」と呼ばれる副調整室のピッチャー卓に座り、スタジオへの指示やVTRのスタートなど、放送進行の全責任を負う)
③NY支局の病院企画の『受け』を下出ディレクターにふる。
④「最後のブルートレイン~『富士・はやぶさ』が東京駅出発」の扱いについて、スタッフから意見が。「去年、岡山キャスターが東京~札幌間のブルトレを取材しているので、このときのカットも使ってはどうか?」「後藤キャスターもブルトレ乗車経験多く、スタジオでいろいろ思い出を語れる」等々。3項目目にして、スタジオでの「受け」をたっぷりとることを決める。
⑤「北朝鮮の衛星発射宣言のリアクション」について議論。
他局は大きく取り上げるだろうが、「ソマリア&NYの病院崩壊」のダブル企画でいくので、今日は扱いを最小限にとどめることを確認。
     
【14:00~16:00】
 いったん出社されてきた後藤キャスターと今夜のメニューについて打ち合わせ。『後藤の視点』をソマリア対策の企画のあとに置き、「海だけでなく、陸のインフラ整備など人道支援が必要ではないか」という点を強調することを確認。
 「ブルトレの思い出」については、後藤さんから「出雲号にのって島根に帰る竹下首相を取材がてら、よく東京駅で見送ったよ。共同通信の札幌支局から上京する時も一家でブルトレに乗ったな」とお話が。予定通り、スタジオの受けコーナーで話してもらうことを確認。
 出社した膳場キャスターとメニューについて打ち合わせ。膳場さんは東京生まれの東京育ちでブルトレにほとんど乗ってないこのこと。ブルトレの受けは、後藤キャスターと岡山キャスターの2人でいくことに。
 『金曜解放区』(MBS毎日放送等を除く)の膳場さん取材「歌舞伎でキャスター宙づり体験」のVTRをプレビュー。
   
【17:00前後】
 「カルデロン一家」問題で、入管当局の「娘だけ在留許可」を一家が受け入れるとの速報が入る。当初、想定していた枠をやや増やすことを決める。
 取材から戻ってきた小林ディレクターに「TODAY」のフラッシュ・ニュース5項目を、また木下ディレクターに「最後のブルトレ」を担当するよう指示した上で、中身について2人と打ち合わせ。

【18:00前後】
 スタッフと弁当(今日は「焼き肉弁当」だったが、経費削減のおり少々チープな感じ)を食べながら、夕方の各局ニュースをモニター。

【19:10から】
 NHKの7時のニュースを横目で見ながら、報道局センターテーブルで、週末と月曜日のニュース予定の打ち合わせに出席。月曜日のニュースは、WBCの日本対キューバ戦がメイン。
 『ニュース23』の正式な「第1版」を作成し、各部に配布。
 
【21:00過ぎ】
 「フラッシュ・ニュース」が終わり、報道局のセンターにある編集長席に移動して、「フラッシュ・ニュース」を担当した矢部さんから夜に入って発生したネタの引き継ぎを受ける。
 BPOが日本テレビの『バンキシャ!』問題で調査委員会を設置するといニュースが入ってくる。メディアの相互監視という観点から『23』で一項たてて放送することを決定。
 関東地方に強風波浪警報が次々と出され、そのたびに「ローカルの気象情報」の速報スーパーを入れる。 

【22:00~23:00】
 進行表を「2版」「3版」と更新。
 22:20すぎに北陸のチューリップ・テレビのデスクから「強風で富山でトラックが横転した映像を取材した」と連絡あり。映像を速やかに送ってもらう手配をして、長谷川ディレクターにトップ項目の原稿の修正を指示。
 「最後のブルトレ」と「宇宙ゴミがあわや国際宇宙ステーションに衝突」の2つの項目のスタジオ受け原稿を執筆。  
 スポーツコーナーのキャスター打ち合わせに同席。
 私からから全体の流れを後藤・膳場・岡山の3キャスターに説明。この間も、各項目の担当ディレクターが書いた原稿をチェック。
 全体にそれぞれのVTRがオーバー気味なのを念頭に入れつつ、大部屋の一斉連絡マイクで「担当者は進行表の尺をできるだけ守る」よう注意喚起。

【23:15】
 キャスターがスタジオに入り、長谷川ディレクターがサブのピッチャー席について、カメラ・リハーサル。

【23:30】
 私もサブの指揮卓について、いよいよ放送がスタート!
放送中、最も重要なことは第一に時間の管理。TK(タイムキーパー)さんとインカムと呼ばれるヘッドフォンでニュースの項目を消化するごとにどれだけ予定の尺を超えたのか確認する。全体に「押し気味」なので「TODAY」の最後の「バングラデシュの高層ビルで昼火事」というニュースを落とすことに決定。さらにスポーツ・コーナーのあとの「来週の予定」の項目で時間を調整することに。
 
【25:00】
 放送が無事終了し、スタッフの席にキャスターも交えてビールを飲みながら「反省会」。月曜日の予定を簡単に説明して解散。

 こうして、一日を振り返ると『ニュース23』の編集長は、半日以上、時間に追われながら仕事をしていることを改めて思いしらされる。
 この日は、夜に入ってから発生したニュースは「富山のトラック横転」と「BPOが日本テレビの『バンキシャ!』問題で調査」くらいのものだったが、日によっては大きなネタが夜になって飛び込んできて、大幅に進行表を書き換えることもある。場合によってはキャスターに取材に出てもらって、急きょ中継をおこなうこともあるのだ。
 こうした作業を終えて深夜タクシーで帰宅するのだが、心地よい疲労感と満足感に浸る日もあれば、ちょっとした失敗に後悔して頭をかかえるときもあったりして、なかなか編集長という仕事は奥がふかいのである。

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