「政権交代は私たちに何をもたらすのか(II)」
2009/09/30
~少子化対策・ダム建設の見直し・日米関係を『見ていこう』~

今度の政策の大きなところは、財政支出の中で“既得権益化”したところにメスを入れながら、同時に「具体的な人の生活に保障を与えていく」というやり方。
例えば、一つ例を挙げれば、『少子化』という話がありますね。
「少子化が続くと日本はどうなるんだ」ということを、皆さんおっしゃる。「日本はどうなるんだ」っていうね。そういうことを元気におっしゃる。「外国人ばっかりになるんじゃないか」とか、そんなことを言うわけですよ。
だけど「子どもを育てるのにどれだけお金がかかるか」とか、共働きの場合はホント“負担”ですよ。そういうことから考えて、子どもを産んで育てるという選択につながることを、ろくにやってこなかったでしょ。それよりも、女性が子どもを産む、育てるっていうことを考えないようになったのは、これは、「戦後教育の弊害であって、女性が権利ばっかり言うから、“子どもを産むという崇高な義務”を自覚しなくなったんだ」という、こういう話ばかりになっちゃうわけね。
まず、“子どもを産むという崇高な義務”について言えば、“崇高な義務”である以前に「子ども産みたい」と思っている女性の数は極めて多いと私は思っていますね。
だから子育て支援のために財政支出をする『子ども手当』って、ちっともおかしくないと思いますよ。選挙目当てではなくて、むしろ「わけ隔てなく皆にあげるお金」と「必要あるところに出す福祉政策」を組み合わせていくのが、一番正しいやり方なんですよね。『子ども手当』を「所得が少ない人だけに」ってやったら、この政策、失敗するんです。もちろん財政には大きな負担を与えるんですけど、それだけメリットがあることで、子どもが増えるからってだけじゃないんですよ。子どもを産みたくなる社会になるって、結構なことじゃないですか。そういう意味で、僕はこの政策が全部ナンセンスだなんて思わない。

それは「なるほどな」と思う。だけど動き始めたものを止める時には、その問題は必ず起こってくるわけです。
あるいは、(日米間の)『外交政策』で言えば、「日米関係が終わりになる」という報道がたくさんありました。これは実は、“アメリカの日本専門家”という人の一部と結びついた議論で、だいたい、“自民党と役人ばかりが知り合いのアメリカ人”と“共和党の議員ばかりが知り合いの日本人“のセットで出来上がっている世界ですから。だから、オバマが大統領になった時には、「大変なことになった」って日本でパニックが起こったわけですね。
で、今度も、「民主党が政権を取った。大変だ」とパニックが起こるわけ。
でもね、例えば、『普天間の問題』を考えてみましょう。普天間についての民主党の立場が極端だと。「普天間の移設なんか言ったら、日米関係はおしまいだ」って報道されます。これは私は間違いだと思っています。「普天間問題の解決が難しい」っていうことは、日本側もアメリカ側もよく知っている。理由は簡単で、「沖縄の人が認めないから」です。普天間基地の存続に対して、沖縄では、「自民」だろうが「民主」だろうが、政党を横断して非常に強い反発があるんですよ。現場がそうである限り、この問題は動きゃしないんですよ。だとしますとね、「普天間問題がどのような形になるのか」ということではなくて、「普天間の移設が、“日米関係を危機に追いやらないようにする”には、どうしたらいいか」という順番で考えるべきことなんです。
同じ問題は、『インド洋の給油』も同じで、インド洋の給油で、油をあげるわけですから、そりゃ喜ぶ人もいるでしょう。だけど、あれでアフガニスタンの状況が良くなると言えるのかどうか。ここでね、「だからこそ、そういう軍事的な国際貢献はいけないんだ」っていう議論に戻ることが正しいわけじゃない。問題は、アフガニスタンの状況を良くするために「じゃあ、我々に何が出来るのか」ってことから考えなくちゃいけない。
「自衛隊だ」っていう話には多分なりません。戦闘経験の無い軍隊をたくさん送ったところで、自衛隊を守るために別の国の軍隊がお守りにつかなくちゃいけない。イラクでオランダ軍がそのために配置されたわけですからね。としますと、僕は「警察」だと思いますけれども。「警察力の強化」で。これは、文民警察官がカンボジアでお亡くなりになったという経験があってから、非常に問題になりましたけれども、だけど「警察」だと思います。これはアフガニスタンが必要なんですね。

第一に「破たん国家の問題」。これはアフガニスタンが典型ですね。ソマリアもこれに入ります。それから「核不拡散」。北朝鮮問題は、これは“核兵器の不拡散の問題”として捉えていかないと、そもそも日本の出番がないし、また、それが正当だと思います。第三が「地球の温暖化」で、順番が四つ目になりましたけど、おそらく一番重要なのが「市場経済を維持するために何が必要なのか」ということで、もっと露骨に言うと「世界金融危機のようなものがもう一回起こっては大変だ」ということです。
それを防ぐためには、短期間に大量の資金を各国が融通できるような仕組みです。グローバルなレベルで言う“宮沢イニシアチブ”ですね。こういったことは、アメリカは乗れる話なんです。こういう、「日本とアメリカが両方―日本とアメリカに限る必要性さえないんだけど―共同して取り組む作業をやっていこうと“目標提示”すること」。
懸案はありますよ。例えば、日本の中で軍隊を出すことに対して非常に強い反発があるのは周知の事実で、これに反発するアメリカ人もいますけどね。だけど、そもそも、その優先順位はアメリカにとって、そんなに高くないんです。そしてさらにドライに言えば「だったら他に何が出来るんですか」って、こういう話なんですよ。ですから、「給油が終わったら日米関係は終わり」というのは、明らかな間違いですし、「普天間移設を言ったら、アメリカとの関係が緊張する」。これも間違いなんです。これは、結局、日米関係の現状というものは少しでも動いたら大変だと思いすごしているだけなんです。
だけど、実際には、ホワイトハウスの報道官に向かって「石油供給やめたら、大変なことになりますよね」って一生懸命おねだりしたわけでしょ?ダメだっていうことをあちらに言ってもらおうとしたわけですよ。だから、例によって、また外圧を使って、日本の政治を左右しようとするっていう、まあ実に古臭いことをやっているわけで。そんなことやるくらいだったら、「同盟強化」か「同盟に対して強く言えるか」ということじゃなくて、これ今準備している原稿ですけれども、“日本とアメリカが一緒になって何をやろうとするか“。『日米パートナーシップ』とか『グローバルパートナーシップ』とか、まあ、おしゃれな言葉、何でもいいんですけどね。そういった形で、共通してするところから始めていけばいいんです。
新政権が出来るってことは、アメリカにとってはある種の期待を抱かせることなんですよ。これまで出来なかったことが出来るということですからね。そこのところから扱っていけばいい。結局、現状が変わることに対する恐怖を持っている人が、今、騒いでいるんだと私は思います。
問題はね、自分たちが正しいと思っているものが本当にそうなのか、ということなんです。そこに尽きるんですよね。皆が言っていることが正しいというふうに私は考えないしそれから大衆が“おとなしい羊”だとも考えないし、また、十分に愚かになりうる。僕も年がら年じゅう間違えていますから。第一、私も大衆の一員だと思っていますから。そこで「大衆恐怖に根ざした反発を、大手新聞社とか大手テレビ局などマスメディアに身を置く人たちがしている」というのが今の構図だと思います。
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