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筑紫・鳥越 往復レター
2008.9.5 鳥越俊太郎→筑紫哲也
筑紫 哲也 様
メール拝見しました。
すぐにも返信すべきところ、総理大臣が突然辞めるなんて言い出したりするもんですから、メディア側もバタバタとさせられて今日迄日が経ってしまいました。世の中は一斉に「無責任だ」「放り出した」などと言い募っていますが、福田さんは案外正直な、自分に忠実な人で、これ以上総理の職にあると日本の社会に迷惑をかけると本気で思ったんでしょう。その判断が合ってるかどうかは別にして、まあ、こういう政治家がいてもいいんじゃないかと思っています。
肝心なことは何がそうさせたのか、というきちんとした分析でしょうか?
ところで、筑紫さんは治療の方は如何ですか?
文面から見るとお元気な様子で、安心していますが、やはりがんの治療は治療ですから大変なこともおありでしょうね。「NEWS 23」を見るたびに筑紫さんは今どこで何を?と思いを馳せております。
さて、筑紫さんから投げられた質問…いま日本のがんとの闘いの中で最も遅れたところ、誤っているところはどこか?ということですが、いきなり来ましたね!!正直なところ一患者に過ぎない私にはとても手に負えない問題提起ですよ。私の場合は直腸がんの手術をして1年半後に肺への転移が見つかり、左右の肺の手術を含め2年間で3回の手術をしました。
いずれも内視鏡を使った「腹腔鏡」と「胸腔鏡」と呼ばれる術式でした。手術前の家族全員で受ける説明も分かり易く、私は納得して手術に臨むことができました。
またこの手術の方法だと身体への負担が切開するよりは軽く、入院から退院迄は大腸で2週間、胸では5日間でした。
従って私の場合がん治療について文句はないんです。ただ、術後予防のため抗がん剤を経口で飲んでいますが、これは副作用もなく、果たして利いているものやら??ま、ドクターに言われるまま飲んでいるんですが、私の経験だとこの分野は日本ではかなりの遅れがあるんじゃないでしょうか?つまり、日本ではがん治療は手術が先行して始まったからでしょうか?外科医が抗がん剤の選択もしています。
しかし、抗がん剤等の化学療法は外科とは異なる内科の領域のような気がします。正確に言うと、アメリカあたりでは必ず病院にはいると言う「腫瘍内科医」が日本では病院によっている所といない所があるようです。同じ化学療法でも放射線科の専門医はどの病院でも独立して存在しているようですが、抗がん剤の専門家が少ないんじゃないでしょうか??
最近は抗がん剤もかなり進歩していて分子標的薬が開発され、がん細胞だけに作用するものが出て来ていると聞きました。これだと副作用が少ないということですが、自分が経験した訳ではないので正確な所は分かりません。以上、自分の経験でしか言えませんでしたので答えになっているかどうか分かりませんが、第一回目のリターン・レターと致します。
鳥越 俊太郎
