「十年ゴム消し」
2009/09/26
![]() | 「十年ゴム消し」 忌野清志郎 著 河出文庫 |
私は彼の歌が苦手だった。
…というよりも、食わず嫌いならぬ“聴かず嫌い”。
だから彼が歌以外にも、こんなに多くの言葉を発してきた人だとは
ずっと知らずにいた。
彼のファンにしてみれば
「何いってんだ、このヤロー」かもしれない。
そんな私が“とある必要”に迫られ、
彼の音楽を聴きまくることになった。
そして当然のごとく、その世界に惹きこまれた。
しかし、それからしばらくして、
彼はこの世からいなくなってしまった。
その言葉は、奥が深すぎるほどに深く、
正直なところ、たまにわからないこともある。
空想なのか、現実なのか。
でも、その言葉の先を知りたくて、
仕事をしていても、街を歩いていても、ふと考えてしまうのだ。
私たちは不幸なのかもしれない。
彼に会うことはもうできないから、だ。
私たちは幸せなのかもしれない。
彼の残したものはずっといろいろ語りかけてくれるから、だ。
彼は言う。
「今じゃみんなチョー消しさ。十年や二十年なんて、ゴム消しさ。」
…なんだか、かっこいい。
さて、私の人生。
そう言える日は、いつか来るのだろうか。
とにかくちょっと素敵なキヨシローワールド。
よろしければ、ぜひ。
「WEB多事争論」編集委員 鎮守庸代
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309409726 (河出書房新社HP)