コレヨモ!

『THIS DAY OF CHANGE
~ディス・デイ 希望の一日~』

2009/10/23



「THIS DAY OF CHANGE~ディス・デイ 希望の一日~」
クーリエ・ジャポン編集部

講談社


ある日、世界中で132人の写真家が写真を撮りました。
テーマは『HOPE(希望)』。

それは2009年1月20日。
アメリカで初めて黒人大統領が誕生した日のこと。

「CHANGE」や「YES, WE CAN」とともに
オバマ大統領が度々唱えていた言葉「HOPE」。
何かがCHANGE=変わろうとする時、
写真家たちはどこで、何に希望を見出したのでしょうか。


世界中から集まった“希望の瞬間”は、本当に様々です。

アメリカでは、新大統領の就任式に人々が沸き、
パレスチナでは、病院で新生児が生まれ、
ケニアでは、スラム街で男性がオバマ大統領のバッジを売り、
中国では、出稼ぎから我が家へ帰ろうとする人で駅はごった返し、
内モンゴルでは、朝日のなかで子供が遠くを見つめ、
タイでは、バーで化粧をした男性が性転換を夢見ていて、
イタリアでは、麻薬中毒者が出所する…。

そして日本でも。

この1月20日、
私はひとりの写真家の撮影に同行することができました。
その写真家は、請負契約の打ち切りにより職を失った
大分のとある男性の1日を追うことにしました。

男性は47歳。
2度目の申請でようやく生活保護が受けられることになった、この日。
朝からハローワークに行きますが、仕事はなかなか見つかりません。
お世話になっている支援施設には、
自分と同じ境遇の若者が次から次へとやってきます。

男性は、若者に言います。
「なにかあったら電話して。自分だけで悩んじゃダメだよ」
男性は、私に言います。
「今の夢は、本当に困っている人たちを、
 自分がしてもらったように助けてあげることなんです。」
そして別れ際、男性はこう言いました。
「あまり悲壮感は出したくないんですよ、改善している途中ですから。
 悲壮感を丸出しにしても、先に進まない。それこそチェンジ。
 俺たちがチェンジしていかないといけないと思ってますんで。
 とりあえず白髪を染めて。で、ちょっと若くなって頑張ろうと(笑)」

男性は現在をあきらめることなく、まさに“希望”に溢れていました。
私はこの帰り道、ずっと笑顔だった気がします。

もちろん彼の写真も、この写真集におさめられています。

あの日から9ヶ月とすこし。
世界はどうCHANGEし、
いま、何にHOPEを見出しているのでしょうか?

ちなみにこの写真集、
“写真界のアカデミー賞”と言われる『Lucie Awards(ルーシー賞)』に
ノミネートされました。(授賞式はニューヨークで今月19日に開催されました)
残念ながら受賞は逃してしまったのですが、
出版元の講談社は、アジアの出版社として初めて
ルーシー賞にノミネートされたそうです。
それだけでも快挙です。

本そのものは結構な大きさなのですが、
それが“希望”の大きさや重さだと思うと、
なんだかちょっと嬉しくなるのです。
よろしければ、ぜひ。


WEB多事争論編集委員 鎮守庸代


*クーリエ・ジャポン「ディス・デイ」の特設サイト 
www.courrier.jp/120  (写真をみることができます)
  
*「ルーシー賞」のサイト www.lucieawards.com/09/nominate/