コレヨモ!

湯浅誠さんのコレヨモ!

2010/06/10



「大搾取!」
スティーブン・グリーンハウス 著
曽田 和子 翻訳
湯浅誠 解説

文藝春秋

最近ずっと薦めているのは、私自分が解説を書いた「大搾取」という本です。 著者のグリーンハウスさんは、NYタイムズで30年間労働の記者をやってきた人で、アメリカの労働がどれだけ壊れているかっていうことを書いています。でもこの本のいいところは、ただそれだけじゃなくて、希望のある話もいくつかあるんですね。それは例えば、ウォルマートと張り合っている「コストコ」というスーパーチェーンの話です。そこはレジのおばちゃんが3年間働くと時給19ドルなんです。日本円で2000円ですよ。それで全米四位のチェーン。社長の給与は年間3500万円。だからウォルマートの対極にあるようなものでね、そういうところがちゃんとやれているんだっていうことを提示したり、また、ウォルマートは人をどんどん入れ替えるから、労務管理コストもかかるし、万引きは絶えないし、という、それこそディーセントワークって何なんでしょうねというような。そういうことも色々書いてある本です。 本の終盤の方に、こういう一節があります。 「見えないことは無視につながり、逆に、関心は尊重につながる」っていう一節です。これを私、座右の銘に決めたんですよ。最近ちょっと使ってるんですけど。 凄くいい言葉。「見えないことが無視につながる」んだってことは、ちょいちょい私も似たようなことを言ってきたんですけど、「関心が尊重につながる」ってのはねえ、なかなかそこまでずばっと言った言葉は初めてですね。でもまさにそうなんです。



湯浅誠 1969年生まれ

NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、反貧困ネットワーク事務局長他。90年代より野宿者(ホームレス)支援に携わる。「ネットカフェ難民」問題を数年前から指摘し火付け役となるほか、貧困者を食い物にする「貧困ビジネス」を告発するなど、現代日本の貧困問題を現場から訴えつづける。

著書に『反貧困』(岩波新書、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞、第8回大仏次郎論壇賞)、『貧困襲来』(山吹書店)、『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文館出版)、『正社員が没落する』(堤未果氏と共著、角川新書、2009年)、『派遣村』(共著、岩波書店・毎日新聞社)、『どんとこい!貧困』(理論社「よりみちパン!セ」シリーズ)、『岩盤を穿つ』(文藝春秋社)など。

2008~09年年末年始の「年越し派遣村」では村長を務める。2009年10月内閣府参与に就任。雇用対策本部内に設置された貧困・困窮者支援チーム(主査:山井和則厚生労働大臣政務官)の事務局長を務める。2010年3月内閣府参与辞任。
2010年5月10日、内閣府参与に再び就任。
貧困・困窮者支援チームを改組したセーフティ・ネットワーク実現チーム(主査:細川律夫厚生労働副大臣)で事務局長代理を務める。