新・明日への伝言
この国のガン
勝原 裕貴(二期生)
この国を蝕んでいるガンの元凶は、機会の不平等にあると思う。昨今、メディアの報道等で「格差社会」という言葉をよく耳にする。この格差社会の原因こそが、機会の不平等である。特に、子供が落ち着いた環境で、勉強や社会生活を過ごせることは、親の経済的な部分に大きく寄与している。
私自身も、大学生の時代に家庭教師のアルバイトを通じて、6名の家庭環境が違う生徒を教えた。中には、母子家庭で母親の両親の援助で、月謝を払っている家もあった。そこで感じたこととして、親の経済的な格差によって子供の受けることができる教育、人格を形成する場に大きな格差が生じていることであった。
この国の指導的な立場の政治家を見渡しても、世襲議員が多く存在している。特に、政権与党の自民党の議員に言えることではあるが。私が言いたいのは、世襲議員が悪いのではなく、このように親に経済的に余裕があれば、世襲議員のように一般の人と比較して、将来の可能性も大きく開けていることが私は言いたい。芸能界や財界も大まかには、同じことが述べられると思う。
一方、生活環境が苦しく、なかなか経済的に恵まれない家に生まれた子供は、将来の夢を語るより目先の生活ばかりに追われ、将来の大きな夢など考える余裕のない、そんな生活を強いられている。本当に、「何かをしたい」「何かになりたい」と考えれば、なかなかお金なしに、人脈なしには上手くいかない。その可能性が、世襲議員のように、親が偉大であればあるほど開けているような気がする。
だからこそ、ある程度は許容したとしても、日本で生まれた子供一人ひとりが、自分の夢に向けてしっかりとした教育と、人格形成を受けられる場を安価で国は提供する責務がある。そのために、教育費を国はOECDの先進国並みに、GDP比で5パーセントほどに上げるべきだ。それによって、公教育を再生する義務がある。政治家の子供が、公立の学校に行かないのは、私立のほうが良い環境があるのであって、そのことは公教育に問題があることを暗示していると思う。
筑紫さんのガンのように、日本社会には機会均等だけでなく、たくさんの小さなガン細胞がある。そのガン一つひとつを、しっかりと除去していかねば、やがてこの国はガンで亡くなってしまう気がする。ガンであるからこそ、のんびりと考えている暇もない。だからこそ、国民一人ひとりが身の回りで感じている「この国のガン」を見つけ出し、それを認識する必要がある。そして、そのガンを退治してくれそうな議員をしっかりと自分の目で見て国政、地方選挙で一票を投票する責務がある。国がこれほどガンに侵されて末期であるというのに、選挙の投票率が上がらないことこそ、大きな問題を秘めている。少なくとも私は、この国のガンを見つめ続けて、どうすればガン細胞が無くなるか考えたい。それが、日本国民に求められていることだ。