新・明日への伝言
この国のガン〜経済不況と雇用のあり方〜
蒔田 圭子(一期生)
第1 この国の現状
金融危機に端を発した実体経済の悪化が、雇用環境を急激に変化させた。厚生労働省の調べによると、2008年10月から2009年3月までに失業したり失業が決まっている非正規労働者は8万5012人に達している(日本経済新聞2008年12月26日夕刊)。この非正規労働者のうち派遣労働者が5万7300人で67.4%を占めており、その他は契約労働者が1万5737人、請負労働者が7938人、その他が4037人となっている。このように非正規労働者の解雇が進む一方、新卒者の内定取消しも769人にのぼり2008年11月に行われた調査の時の331人を大きく上回る数字となった。
日本のバブルが終わり十数年、日本の不況は一向に回復の兆しを見せない。われわれ市民の生活も、その多くが中流階級であった昭和の時代から、格差社会と呼ばれる社会へと変化を遂げた。現在は年収300万円の時代と呼ばれるほど、低所得の家庭が増加している。
第2 この国の問題点
では日本の経済を活性化させ、ひいては国民の生活をより豊かなものにするためには、どのような対策が必要か。もちろん、この不況を脱するのに政府による行政政策は不可欠である。しかし、もっと根本的な解決を図るには、国民に仕事の機会が十分に与えられ企業が利潤を高め、かつ国民それぞれが経済的自立を果たせるようにすることではないだろうかと思う。国民に仕事が与えられず所得が減ると消費が落ち込む、そして消費が落ち込むと需要が減るので供給が経る、供給が減ると企業の利潤はいつまでも高まらない。従って、日本経済の活性化・国民の健康で文化的な生活は、雇用を削減することでは実現されないのである。
また仮に、企業努力にも関わらず社員を削減しなければならない場合があったとしても、非正規雇用者から削減する方法をとるという現在の企業の方針は間違っている。企業が利潤を上げるには、有能な人材を適切な場に配置することが不可欠である。非正規雇用者であっても正社員より有能な人材はいくらでも存在する。しかし、労働者を保護する法律に違反しないようにするという理由だけで企業は仕事の有能さの優劣でなく、非正規雇用者という理由だけでこの企業に利潤をもたらせ、日本経済の復活に貢献してくれるかもしれない人々を解雇しているのである。
確かに労働法は労働者の保護を厚く保障している。したがって、正社員を解雇することはそうそうできない。しかし、そのために有能な人材を確保する途を閉ざすという方法を採っていてはいつまで経っても日本経済は回復しない。また、かかる対策を講じずに低額の定額給付金を給付することでは何の解決にもならない。また、政府は派遣法の見直しを検討しているが、もはやこのような不十分な見直しをしている場合ではない。
第3 おわりに
この年末、派遣村で年を越したある男性は「やっとゆっくり眠れる」と話している(朝日新聞2009年1月3日)。このような日本の状況を一国も早く脱却するよう、政府・企業・国民は問題の焦点をまず正確に把握すべきである。