新・明日への伝言
この国のガン
中西 孝仁(一期生)
教職に就き、時間を無駄に過ごすことにかけて子どもに勝るものはいないと感じる。そういう時間の過ごし方を遊びというのであろう。その遊んでいる子どもに大人は「早く帰ってきなさい」と言う。帰って来れば「早く宿題をしなさい」と言い、宿題を終わらせば「早くご飯を食べなさい」と言う。ご飯を食べ終えれば「早くお風呂に入りなさい」と言い、お風呂から上がれば「早く寝なさい」と言う。朝になれば「早く起きなさい」、「早く学校へ行きなさい」と言う。
一日に何度となく「早く○○しなさい」と言われる子どもたち。生まれてこの方、早く済ませて褒められたことはあっても、遅く済ませて褒められたことは皆無である。こうして幼き頃から追われる日々を過ごすと、ついには時間を無駄に過ごすことが悪になる。「何かしないともったいない」と思っている人は少なくないはずだ。そして時間的な余裕のなさは心の余裕までをも奪っていく。いつも何かに追われている我々の生活を、ゆっくり、ゆったり、ゆたかにしてくれるものは何であろう。