新・明日への伝言

この国のガン

松本 健太郎(二期生)

筑紫先生の最後の多事争論をウェブで見て、この国も私もこのままではいけない、なんとかこの状況を抜け出さなくてはいけないと思った。それは、冒頭で先生が「この国が凋落している」と話されるのを聞いてとてもショックであり、この問題は自分の問題と切っても切り離せないと痛感したからである。

筑紫先生はこの問題の原因の一つに政治の世界において限られた牌が適切に配分されていないことを問題に挙げておられたが、私はこの国に住む一人一人の意識が低くなっており、個人個人が生きる上でのプライドを持っていないことが原因ではないかと思った。つまり、政治の世界において限られた牌を適切に配分するとともに、一人一人の意識を変えるきっかけや出来事に直面し向き合うことが必要であると考える。

プライドは私にとって大切なものであり、自分が自分に課すルールであると考える。私の経験上、プライドはトレーニングされた筋肉のように壊されては強くなり壊されては強くなるものであり、他人から教えてもらったりするものではなく、自分自身が直面し向き合うことで生まれるものである。プライドが壊される時は何かきっかけがあり、それを乗り越える度にプライドは強くなってきた。また、プライドは物事を考える上での尺度にもなり、物事を想像する糧にもなってきた。

最近、殺人や幼児虐待といったニュースが10年前よりかなり増えたと思う。こういった事件がどうして増えたのか分からないが、もし不条理な現実を突きつけられて、一時の感情で起こしてしまった事件であるならば、それはプライドを持てなかった、つまり、自分のルールを守れなかった人達ではないかと思う。また、その事件を起こした後どうなるかまで考えられなかった人達であると思う。

私は昨年の4月に社会人となった。今までクラブやゼミ、先生を含む多くの人から様々なことを教えて頂き、自分なりのプライドを持って生きてきた。しかし、会社に入ってそのプライドはもろくも崩れた。それは、失敗や先輩との衝突の中で自分のやり方や考え方が間違っている事実を突きつけられたからである。正直、甘かった。責任の重さや組織の中で自分の立場を改めて考えさせられた。そんな時に、先生のメッセージを聞いてこの国の姿と自分の姿を照らし合わせて、現状を乗り越えなければいけないと強く感じた。

この国がガンであろうがなかろうが、一人一人が現状に対して危機感を持ち、個人が直面している問題に向き合うことが今改めて必要であると思う。なんとか変わりたい、情けない自分はもう嫌だと思っているだけでは意味が無い。少しでも行動すれば全て自信につながる。少しでも前進。筑紫先生、背中思いっきり押してください。