コロンビア大学漂流記

金平茂紀(かねひら・しげのり)

1953年北海道旭川市生まれ。1977年にTBS入社。以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、「筑紫哲也NEWS23」のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。
報道局長を3年間歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。アメリカ総局長・兼・コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に「世紀末モスクワを行く」「ロシアより愛をこめて」「二十三時的」「ホワイトハウスより徒歩5分」「テレビニュースは終わらない」「報道局長業務外日誌」など多数。

#15 コロンビア大学にコヨーテが現れた?

2010/02/11

今日は朝から雪がしんしんと降っている。大学に顔を出したら、多くの授業がキャンセルになっていた。キャンパスは白銀の世界。学生たちが子供にかえったみたいにあちこちで雪合戦をやったり、雪だるまをつくったりしている。案外幼いねえ。ハリケーンや台風、大雨などの理由で、学校が休みになると、学校という場所は一種の「解放空間」になるようなところがあって面白い。永遠の放課後みたいな感じか。この分では、あしただって休講が相次ぐんじゃないだろうか。




幼いねえ、君たち。

それでも図書館では、やっぱり学生たちが一生懸命勉強している。彼らは本当によく学びよく遊ぶ。何だかエネルギーのインプットとアウトプットの絶対総量がすごく大きいのだと思う。


北海道を思い出したりして。


夕刻にイルミネーション点灯。きれいだよな。なごむよな。

先週の金曜・土曜日に、東アジア関係の学問を学んだコロンビア卒業生たちの年次総会があって、ドナルド・キーン名誉教授が基調スピーチをやるというので出かけてみた。


基調スピーチ中のドナルド・キーン名誉教授(筆者撮影)

キーン教授のスピーチは85歳の年齢を感じさせないほど優美なもので、みずからが日本文学と関わるに至った学生時代の経験などをユーモアを交えて語っていた。1940年代ケンブリッジ大学時代当時の日本語研究のレベルは、10世紀ころの古語研究者と20世紀の日本語研究者がまじりあって、「おのこ」「おみな」が「男」や「女」と同時に使われてまじりあう奇妙なものだったと笑いながら話していた。学生たちも実に真剣に聞いていた。その際に配布された今年の年次総会(第19回目)のプログラムをパラパラめくってみたら、案外面白そうなので、翌日、いくつかのプレゼンテーションをのぞいてみた。
日本の政治家たちになぜ二世、三世といった世襲議員が多いのか、それが民主主義の原理とは逆向きであるにもかかわらず。それをなぜ日本の有権者たちは是認しているのか、といった発表や、水俣病患者たちのドキュメンタリー映画を撮り続けた土本典昭監督に関するプレゼンテーションなどを聞いた。いずれもアメリカ人の大学院生の研究テーマである。とてもレベルが高い。あと、気がついたのは、中国からの学生たちがものすごく多く、研究発表の相当部分を占めていた。半分くらい? 91人のプレゼンター名簿のうち、明確に日本人の名前だとわかったのは3名にすぎない。学問交流の世界での中国パワーを感じる。

ところで、この数日、大学で話題になっているのは、コロンビア大学のキャンパスにコヨーテが現れたというニュースである。あの野生のコヨーテが、である。2月7日の朝、Lewisohn Hall の前にひよっこりと一匹のコヨーテが現れたのが目撃されたというのだ。本当かな。たぶん本当だろうなあ。大学はただちに「もしコヨーテをみかけても近寄らないように」との警告を学生宛に出した。どこかの森にいついていたのが、餌がなくなってキャンパスに出てきてしまったのか。ハドソン川沿いには結構、自然も残っている。それにしても、今日のような大雪の日。迷い込んだコヨーテはどこで何をしているのだろうか。


NYポスト紙より。都市部にコヨーテが現れる現象が増えているという。

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