
ラブリーボーン
2010/01/29
さて今週は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャックソン監督が描くファンタジーでミステリアスな「ラブリーボーン」です。
ペンシルバニア州に住むスージー(シアーシャ・ローナン)は近所に住むハーヴィ(スタンリー・トゥッチ)にわずか14歳で殺されてしまいます。このお話は、スージーが殺されてからのお話なんです。スージーがいるのは天国と現実の世界のちょうど真ん中。自分がいなくなったことを嘆く家族や初恋の人に何とか自分の思いを伝えようとするスージーですが、なかなか思いはかなえられません。そして何よりも気になるのは自分を殺した犯人が平然と家族のそばで暮らしていることです。家族を危険から守るためにも、「この人が犯人!」というのを愛するパパ(マーク・ウォールバーグ)に気づかせたいのですが。
死んだ主人公目線のお話なんてあまりないですよね。家族の悲しみを
その目で見てしまうスージーの心の混乱はどれほどのものなんか、ちょっと想像を超えてしまいました。そのような気持ちにされるのもスージー役のシアーシャ・ローナンの北欧にあるような澄んだ湖色の
目の瞳です。なんでも見透かされているようで、悲しそうで、憂いを
湛えた瞳。心が揺れ動くスージー役にはぴったりでした。
舞台は1970年代前半。出てくるショッピングモールや家族の食事がその当時の雰囲気を上手に演出しています。そしてティーンエイジャーの服装もなんだか懐かしかったです。色鮮やかなパンタロンや毛糸の帽子…。そして彼女の部屋に張ってあったポスター!当時のアイドル、デビット・キャシディー!!まさに70年代なんですよね。私は彼が表紙の日記帳を使っていました……。
「そんな楽しいお話じゃないんでしょ!」と突っ込まれそうですが、スージーを思う家族に魂をぶるぶると揺さぶられるのでそういうサイド的なところに目が行ってしまうのです。そして私たちの誰もが見たことがない天国のイメージは、最新のCGで美しく、温かく、楽しそうに描かれています。現実の部分が暗く、つらいので、その対比はお見事の一言です。
なんとも不思議な感覚の作品です。でもきっと心は温まるはずです。
小池由起
映画『ラブリーボーン』公式HP http://www.lovelyb.jp/
2010年1月29日(金)丸の内ピカデリー他 全国拡大ロードショー