
しあわせの隠れ場所
2010/03/12
映画の祭典アカデミー賞、予想は当たりましたか?
「ハート・ロッカー」に引き続き、今週もアカデミー賞がらみの作品を紹介します。サンドラ・ブロック主演「しあわせの隠れ場所」です。
アメリカ南部テネシー州メンフィス。リー・アン・テューイ(サンドラ・ブロック)の目が一人の身体の大きな黒人少年マイケル(クイントン・アーロン)に止まります。11月だというのに半そで半ズボンでとぼとぼ歩くマイケルを不憫に思ったリー・アンは彼を自宅につれて帰り、一晩泊めてあげます。テューイ一家は事業で成功したお金持ち。マイケルは父親の顔も知らず、母親はドラッグ中毒。まるで正反対の環境ですが、りー・アンはマイケルの優しさと“何か”を感じ彼を家族として受け入れることにします。マイケルはその運動神経を買われ、テューイ一家の娘や息子が通う私立学校の生徒だったのです。しかし肝心のアメリカンフットボールのクラブ活動のほうが、マイケルの優しさゆえになかなか目が出ません。リー・アンは「私を守ってくれたように、クオーターバックを守りなさい」と命令し、マイケルは徐々に本来の力を発揮していきます。私立高校選手権を制した後に有名大学からスカウトがやってくるほどの選手になったマイケル。そんな彼にある事態が降りかかるのですが…。
これ実話なんです。主人公のマイケルは実際にNFLで活躍する選手で、彼の生い立ちを追ったノンフィクション小説の映画化作品です。「こんなこと、本当にあるんだろうか?」というエピソードの連続でまだアメリカも捨てたモンじゃないな、と思いました。また南部は今でも人種差別が根強く残っているのもこの作品から感じました。そんななかアメリカ版肝っ玉かあさんを演じたブロックがいい味出しています。まるで「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラのように、一度言い始めたら実行してしまう、鼻っ柱の強い南部の女性を、見事に演じています。髪も金髪にして、いかにも南部の金持ち奥さんって感じなんですが、人種差別をにおわす、いやったらしい仲間に決別の一言を浴びせさせるところなんか、爽快感さえ感じさせます。一歩間違うと“出来すぎた美談”になるところを上手くかわせられるのは、ブロックの熱演によるものと思います。
アメリカのカレッジフットボールは地域によってはプロの試合と同じぐらい盛り上がります。そのことがこの作品から感じられるのがフットボールファンの私はとってもうれしく思いました。それとリー・アンの息子S・J(ジェイ・ヘッド)とマイケルの仲のよさ。本当の兄のようにマイケルを慕うS・Jがマイケルにフットボールの基礎を教えるところが見事でした。
きっと見た後に優しい心になれるはずです。フットボールのルールを知らなくても楽しめますので安心してください!
小池由起
映画『しあわせの隠れ場所』公式HP http://wwws.warnerbros.co.jp/theblindside/
2010年2月27日より新宿ピカデリーほか全国にて公開